第11章

数分後、北村健は手を引き、山田澪から目を離した。

彼は夏目彩に向き直り、優しい声で言った。「病院に送るよ」

「でも……」夏目彩は不満げだったが、北村健の冷たい視線に遭うと、言葉を飲み込んだ。

彼はまるで刃物を包んだ綿菓子のようだった。見た目は柔らかいが、噛めば血だらけになる。夏目彩には逆らえなかった。

「足が痛いから、抱っこして」

北村健は身をかがめ、山田澪の目の前で夏目彩を抱き上げた。夏目彩は彼の首に腕を回し、山田澪に挑発的な視線を送った。

まるで言っているようだった。「ほら、あなたは彼の目には何の価値もないのよ」

彼は夏目彩を抱えたまま、山田澪を一瞥もせずに立ち去った。その...

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